絵本作家風木一人の日記

絵本作家風木一人の日記です。

新文芸坐繁盛記

昨日、新文芸坐で「蝉しぐれ」と「ALWAYS 三丁目の夕日」を観た。
平日の昼間にあれほど混んでいるとは思わなかった。
「お席少し前の方になります」と言われ半信半疑で入ると、
本当に前から三番目しか空いてなかった。
ぼくは話題作を公開直後に観たりはまずしないタイプなので、
極端な前方は経験がない。
座ってすぐヤバイと思った。首の角度がありえない。
スクリーン全体が視界に納まらない。
どうしよう?
予告編が始まったとたん理解した。ここで観るのは不可能だ。
席を立って一番うしろへ行く。
立ち見というのもおそらく高校時分を最後に記憶がない。
予告編が中断し「映写機不調のため少々お待ちください」のアナウンスが流れる。
たくさんの後頭部を見ながらペットボトルのお茶を飲む。
目の前の頭がつるつると光っていた。
ハゲアタマって本当に光るんだなあ。
自然な皮膚の油か、それとも何か塗っているのか。
短気な客が怒り出す前に映写機は復旧し上映が始まった。
スクリーンが明るくなるたび、目の前の頭はぴかっと反射するのだった。