絵本作家風木一人の日記

絵本作家風木一人の日記です。

25年に決着を

ぼくが英国のロックバンド THE POLICE のファンになったのは1983年である。シングル「見つめていたい」とそれを含むアルバム「シンクロニシティー」のメガヒットでポリスがロック界の頂点を極めたあの年だ。

当時流行り始めのMTVで、光の表現が実に美しいモノクロームのビデオクリップがヘビーローテーションされていて、それは同じ番組内で流される他のアーティストの曲とはまるで別世界のようで、おそらく世界中で何千万ものティーンズが感じたのと同じことをぼくも感じた。
こんなロックがあるのか。こんなクールで大人っぽいサウンドが。

すっかり魅了されたぼくは遡って過去の4枚のアルバムを聴きながらポリスのニューアルバムを待ち続けることになる。他の偉大なバンド、例えばビートルズピンクフロイドがそうであったように、ポリスもまた絶えず進化し続けるバンドだった。パンク、レゲエ、ジャズ、様々な要素を貪欲に消化しつつ「シンクロニシティー」で一つの完成に至ったかに見えるポリスが次にどこへ向かうのか、それをリアルタイムで聴きたかった。確かめたかった。

残念ながらその願いは結局かなえられない。中心メンバーのスティングがソロ活動を開始し、ポリスはその頂点で活動を停止する。何度か再始動の噂は流れたものの、幻のまま十年が過ぎ二十年が過ぎ、ぼくが初めて聴いたアルバム「シンクロニシティー」は事実上ポリスのラストアルバムとなった。

本当はずっと待っていたわけではない。どこかで「もうない」とわかっていた。それでも正式に解散が宣言されたわけでないだけに、いつあきらめたのかはっきりしないのだ。大いなる期待がずるずるとなし崩しみたいに消えるなんて。ずっともやもやしたものが残っていた。自分の中の思いに決着がついていない感じ。もはやポリスの問題ではなく自分の問題なのだが。

去年、突然(だと思う)ポリスは再結成した。そしてワールドツアーの日程には日本公演も含まれていた。ホントに、嘘か冗談みたいだ。
昨日、東京ドーム。スティングがいて、スチュアート・コープランドがいて、アンディ・サマーズがいた。アンディの顔のしわさえ脳内消去すればそれは完璧な、ぼくが期待した通りのポリスだったと言っていい。

決着は、ついたわけだ。