絵本作家風木一人の日記

絵本作家風木一人の日記です。

さようなら

アーサー・C・クラークが亡くなった。正に巨匠の名に値するSF作家だった。
十代の頃よく読んだSFからぼくが学んだのは、日常とは異なったスケールでものを見るということだった。対象からぐっと離れて百万年を視野に入れたとき、知性とは、文明とは、神とは、正義とは、全ての固定観念が揺らぎ、その奥に方程式のような透明な実在が感知されてくる。ノイズを消去すれば信号が現れるのだ。

「2001年宇宙の旅」という作品は小説と映画が同時並行的に制作されたという。小説の映画化ではないし、映画のノベライズでもない。キューブリックの映画を観て何がなんだかわからなかった人はクラークの小説を読んでみるべきだろう。こちらは(比較的)わかる。ただし混同しないこと。タイトルとオリジナルアイディアを共有しつつも小説と映画はあくまで別作品である。