絵本作家風木一人の日記

絵本作家風木一人の日記です。

金の輪

表参道で新しい絵本の打合せ四時間ほど。いつもとは少し違う段取りで進行中。いつもと違うというのはそれだけでもうワクワクすることだ。

品川のギャラリー・オキュルスで吉田稔美個展「金の輪」。小川未明作の新刊絵本の原画展。小川未明の作品はそれほど数読んでいないが、ほとんどバッド・エンドなんだな。死で終わるものや、状況が話の初めより悪化して終わるものが多い。本当に未明はそういうものを子どもに読ませたくて書いていたのだろうか? どうも謎だ。
「金の輪」も、高熱にうかされながら不思議に澄み切った意識が見た幻のような、美しく悲しい物語。絵本としてはもっと文を短くしても良かったかもしれない。未明は文だけで完結した作品を書いているのだから、そこに絵が加われば100パーセントを超えた表現になってしまう。著作権継承者の許可を得ればダイジェストにすることも可能だが、それは作家自身の許可を得た場合とは自ずから異なる。物故作家の文章作品を絵本化するのは難しい。